ホームページのリニューアルに伴い、以前建てさせていただきましたお墓の写真を写しに行ってきました。
墓前で合掌しながら、ご契約当時のことを思い出していました。
お施主様は、お亡くなりになったお父さんが残した文章の彫刻をご希望でした。
お勤めされていた会社の社内文集に投稿された文章との事で、直筆の原稿を印刷したような感じだったと思います。
後輩たちを励ましているような、若い方を勇気づけるために書かれたと思う文章です。
お施主さんはとても若い方で、ご来店の際は、お墓の資料と思われるものをファイルに沢山お持ちで、よく勉強をされていました。
墓地の寸法などをお聞きした後に、石のことや形のことではなく、最初に彫刻をする文字のことをお聞きしました。
そこで、文集を拝見したのですが、もしもデザイン先行で進めていたら失敗してしまうケースでした。
実は、後にも先にも文章を彫刻する前提でデザインをするのは初めてでした。
どうしてもお墓らしくなくなってしまいそうな先入観がありました。
失敗は許されませんので、まずは安全策として正面文字のおおまかな原稿を作り、縦横比を考えていました。
墓石店としては、奇をてらうような形のお墓は、後々飽きてしまいそうで好みではありません。
ドッシリした感じで飽きのこない・・・と考えている時に、テレビが目に入りました。
ほとんどの人が見慣れている形のため、安定感を感じるバランスです。
大筋は、テレビのようなバランスで進めることにいたしました。
後日談として、このことをお施主さんにお話をしたところ、亡くなられたお父さんはテレビの製作(設計?)に携わっておられたようで、とても喜んでおられました。
お父さんは、巻石までをお元気な間に造っておかれたのですが、どうしても洋型の墓石には似合いません。
全部新品に交換するのはたやすいのですが、せっかく造っておいた巻石代がパーになるばかりか、解体・撤去・処分費まで上乗せされてしまいます。
「将来、ここにお墓をたてよう!」とせっかく造った巻石のはずでしたが、結果として「造っておくんじゃなかった」というのも、お父さんが可哀想な気がして、何だか切ない気分になりました。
そこで、お施主さんに気持ちをお伝えして、和風デザインの階段回りだけは外して処分し、その他のほとんどの部分はそのまま使うことになりました。
巻石は、親子が共同製作という感じで進めさせていただきました。
黒っぽい石の下にあるのがお父さんの巻石です。(手前のコケが生えているのは隣家の巻石)
お父さんの巻石は、あまり目立たない感じで恐縮しますが、白と黒のコントラストはおかしくなくて、とても納まり良い感じになった思います。
ご納骨当日は、お墓を開けたりお手伝いをさせていただくのですが、勤めておられた会社の人らしき方々が大勢お越しでした。
お施主様から、事前に「このお墓を造った墓石店さんからの挨拶をお願いできませんか」とお話をいただきましたが、そんなことやったことないので丁重に辞退させていただきました。
こちらのお墓は、とても思い出深いデザイン墓石です。
京都市南区西九条蔵王町11