ご来店当初は、映画の中の芝生墓地に並んで建っているような背の低い平べったいお墓をご希望でした。
理由をお尋ねしましたところ、先の震災の際に郷里のお墓が倒壊されたとの事でした。
平べったい墓石の場合ですが、文字の彫刻面が上を向きますので、確実に文字の中に水が溜まります。
同時にホコリ等も溜りますので、掃除をまめにしませんとすぐにコケが生えてしまいます。
先々のことを考えますと、文字彫刻面は地面と直角に近い方が良いと思います。
そのようなこともあり、打ち合わせを重ねて最終的には一般的なバランスの洋型墓石に落ち着きました。
地上に納骨室が出ているタイプの、出カロート式納骨室を採用して免震作業が出来るようにいたしました。
上台(上から二番目の石)に穴を2カ所貫通させて、棹石(一番上の石)と納骨室の天端を長いステンレスボルト2本で固定しています。
更に、背面に屏風のような低い壁を立てて上台と接着し後ろにコケにくいようにしています。
また、屏風に2カ所穴を貫通させて、上台の背面に空けた穴まで、太めのステンレスピンが入っています。
このピンは接着していませんので、万が一の作業の際には抜くことで、墓石をばらすことができます。
個人的には、ここまでしなくてもよいように思いましたが、お客様の強い要望がありました。
その時は、打ち合わせをさせていただくごとに補強箇所が増えていったように記憶しています。
また、出カロートの大きさに対して、棹石(一番上の石)が大きいのですが、これも打ち合わせごとに少しずつ立派になっていきました。
幸いに角地で、地震の際に周辺の墓石が倒れてカケてしまうこともあまりないように思います。
阪神大震災の時は、大きな縦揺れで棹石が2~3軒先まで跳んでいったと聞いていますので、こうむる被害の有無は地震の規模次第になってしまいます。
お客様はシックな感じを好まれていましたが、あまり暗い感じもどうかと思いまして、アクセントに茶系の石も使わせていただきました。
あと、ちょっとした余裕を感じていただけるように配慮いたしました。
従来型のお墓のように、隣家の墓地とギリギリになるように巻石を造りませんでした。
15センチくらいで幅の厚めの板石を左右にあしらう形で配置して、隣家との間にちょっとした空間を設けました。
いずれにせよ、随分と頑丈なお墓になりました。
京都市南区西九条蔵王町11